相続税の申告が必要となるケース

文責:税理士 井川 卓磨

最終更新日:2024年04月22日

1 相続税とはどのような税金か

 相続によって財産を相続した場合、相続財産の金額によっては相続税という税金を納めなければなりません。

 しかし、相続税は、役所等が支払うべき税金を計算してくれて納税の通知等が来るものではなく、相続税を申告しなければならないかどうか、申告しなければならないとしていくら納税しなければならないかについて、自ら判断しなければなりません。

 そこで、相続税の申告が必要なケースについてまとめようと思います。

2 相続税の申告が必要となるケースはどのような場合か

 相続税申告が必要になるケースとしては、以下が挙げられます。

 ①相続財産総額が、基礎控除額を超える場合

 ②配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例等の特例を利用する場合

 

 以降でそれぞれ詳しく解説いたします。

3 相続財産総額が、基礎控除額を超える場合

⑴ 基礎控除額とは

 基礎控除額とは、「3000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式から導かれる金額で、相続財産総額が基礎控除額を下回る場合には、相続税額はゼロとなり、相続税申告をする必要がありません。

 他方で、相続財産総額が基礎控除額を超えている場合には、相続税申告が必要ということになります。

 

⑵ 生前贈与がある場合の注意点

 ア 暦年贈与の場合

 暦年贈与とは、1年間に110万円までであれば贈与税がかからずに贈与をすることができる制度を利用した贈与方法をいいます。

 亡くなる前に、あらかじめ将来相続人となる方へ少しずつ暦年贈与を行うことで、相続が発生した際の財産を減らすことができるため、相続税対策としてよく用いられる手法です。

 ただし、亡くなる直前に行われた暦年贈与については、相続税の計算においてはなかったものとして扱われ、暦年贈与された金額は相続財産に加算して計算しなければなりません。

 令和5年までに行われた暦年贈与については、亡くなる直前の3年間に行われたものが相続財産に加算されることになっていましたが、税制改正によって、令和6年以降に行われた贈与については、亡くなる直前の7年間に行われたものが相続財産に加算されることになりました。

 イ 相続時精算課税制度を利用した場合

 相続時精算課税制度とは、60歳以上の親・祖父母から、18歳以上の子・孫に対する贈与について、2500万円までは贈与税がかからずに生前贈与をすることができ、被相続人が亡くなった際に、相続財産に相続時精算課税制度を利用して贈与した金額を加算して、相続税を計算することができる制度です。

 相続時精算課税制度について詳しくは、こちらをご参照ください。

 ウ 生前贈与を受けていたときはご注意を

 このように、生前贈与を受けていた場合には、生前贈与を受けた金額を相続財産に加算して相続税額を計算しなければならない場合があります。

 相続時に残っていた財産が基礎控除額を下回っていたとしても、生前贈与された金額を加算した結果、相続財産総額が基礎控除額を超えた場合には、相続税申告が必要になります。

4 配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例等の特例を利用する場合

 相続税申告に当たり、相続税の金額を抑えることができる様々な特例があり、代表的なものとして配偶者の税額軽減や小規模宅地の特例があります。

 配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続人となる場合、1億6000万円又は法定相続分までは、相続税がかからないとする特例です。

 小規模宅地の特例とは、一定の条件を満たした土地について、50%から最大80%まで評価額を減額することができる特例です。

 これらの特例を利用した結果、相続税を支払う必要がなくなることもあり得ますが、そのような場合であっても、相続税申告は必要になりますのでご注意ください。

5 相続税の申告が必要か心配な方は税理士へ

 相続税申告が必要となる場合についてまとめましたが、ご自身で相続税の申告をしなくてもよいと判断することに不安を覚える方も多いと思います。

 相続税申告をする必要があるのかについては、税理士へご相談ください。

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